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vol.16「酒材班、酒造り体験をするの巻」 PAGE6
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■真夜中に造るのは、それが酒にとってベストだから

木下さんが甑からスコップで蒸米を次々と小型の木桶へ。助手がそれを運び、布を敷いた一畳大の木箱(底がすの子状)にぶちまけ、ヒデさんと女性陣が熱々の蒸米を薄く広げます。そして中尾さんが米の温度を手で確かめながら箱を放冷機にかけ、適温になりしだい掛米は仕込み蔵、麹米は麹室へと運び入れます。

冷ました米のうち麹米は布袋に入れて麹室へ(引込み)

ちなみに昔の灘などでも夜中甑(よなかごしき)と称し、夜明けの低温で蒸米を効果的に冷ますため、蒸米の取り出しを午前3時頃から開始していたとか。
「“真夜中造り”を『ただのパフォーマンスや』と陰口をたたく人もいますが、酒造りにとってこれが一番エエから僕はやっているんですわ」
中尾さんは後で語ってくれました。
黙々と作業を続けていると、互いの息も合って、自分達が本当の蔵人になったような気分です。しかしヒデさんの:
「ふだんはこれを一人でやるんですから、スゴイことですよ、驚きですよ」
の言葉に、一同改めて中尾さんのバイタリティに感服する思いでした。
蒸米が全て運び出されると、中尾さんと木下さんは麹室で引込み*の作業、我々4人衆は使った道具の洗浄と釜場の掃除です。そして掃除が済むといよいよこの日の作業のクライマックス、麹室での種付け作業へと取りかかるのでした

 

 
蒸し上がった米を小型の木桶で運ぶヒデさん


蒸し上がった米を冷ます放冷作業。熱いのでゴム手袋をして米を薄く広げる


放冷が済んだ後は道具を熱湯で消毒
■大地の恵みに、ハラハラと酒の精が舞い降りて
種付け。ひととき神事のような厳粛な空気が流れた

室に入ると、床の上一面に蒸米が広げられています。中尾さんがもやし(種こうじ)を小型のふるいに入れ小刻みに振ると、シャカシャカと静かな音と共に、緑色の粉末がハラハラと米の上に舞い降りていきます。その光景はあたかも厳粛な神事を見ているかのよう。ピーンと張りつめた空気が室の中に流れます。
もやしをまんべんなく米の上に撒き終えると、床揉みの作業に移ります。素人には難しく、また重要度の高い作業なので横で見学かと思いきや、我々も参加させて頂けることに。
「蒸米全体にもやしが均一に付着し麹菌が繁殖できるよう、こうしてやさしく手のひらで広げながら揉み込んで下さい。切り返しの時よりも米の状態が柔らかいので力を入れすぎて米をつぶさないよう」
見本を示しつつ、中尾さんが一人ひとりに目配りしながら丁寧に指導してくれますが、こちらは(こんなんで大丈夫だろうか?)とイマイチ自信の持てないまま、とにかく揉み込んでいくのみ。しばらくしてあちこちに温度計を差し込み、十分に温度が下がったのを確認すると、蒸米を床の中央部に積み上げ、布でくるみ、ビニールを被せ、その上から幾重も布を掛ける。こうして半日以上寝かせて麹菌の繁殖を待つのです。
「お疲れさまでした。夜中の作業はこれで終了です」
心地よい疲労感と充実感が広がります。気がつけば明け方の5時。
「朝は8時半玄関前集合です。近くの喫茶店で朝食をとります」
3時間ばかりのわずかな仮眠をむさぼるように、部屋に戻るとあっという間に深い眠りに落ちたヒデさんと助手でありました。

*引込み:冷却した蒸米を麹室の床に運んで33〜36℃の温度で積み上げる作業

 
床揉みに悪戦苦闘する助手を優しく見守る中尾さん






床揉みの後は米を床の中央部に集め(盛り)何重も布で包んで保温する

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