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vol.16「酒材班、酒造り体験をするの巻」 PAGE7
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■杜氏と酒の神様が創り上げた結界で

3日目午前1時。この日も助っ人木下さんを交えて6人の真夜中造り。蒸米に一回り大きな甑を使った他は、同じ作業が繰り返されます。一つ違ったのが、酒母タンクの櫂(かい)入れ作業を行ったこと。水、米、麹米、そして酵母が入ったタンクを順番に櫂でかき回し、しばし杜氏気分を味わわせて頂きました。
米が蒸し上がって放冷作業に。米の温度を確かめる中尾さんの厳しい表情に、前日との違いを感じ取ったヒデさん。作業の合間にさりげなく歩み寄ります。
「今日から初めて、この三島雄町を使った大吟醸の仕込に入るんですわ。これまではずっと山田錦でしたから」
大吟醸を仕込む緊張感と、これまでと違う米を使うことによる緊張感が相まって、独特の雰囲気を醸し出していた訳ですね。
麹室に移ってからも、床を二つに区切り、大吟醸用の三島雄町は中尾さんが一人ですべての作業を手がけます。麹室という神殿への立ち入りを特別に許された我々でしたが、そこには確かに、素人が決して踏み込んではならない、杜氏と酒の神様が創り上げた結界が張り巡らされていたのです。
やがて床揉みが終わり、温度計で米の温度を計ります。目盛りは32℃前後。

麹の温度を下げるため布をうちわ代わりにして扇ぐ

「ちょっと高いな」と木下さんに向かってつぶやき、二人はおもむろに大判の布の両端を持ち、床の端から端へ移動しながら、声を合わせて10回ずつ扇ぎます。一往復して温度を計り、再度扇ぎながら一往復。ようやく理想の温度に下がったところで、蒸米を中央に積み上げ、布でくるみ、ビニールを被せ、その上から幾重も布を被せます。ようやく中尾さんの表情が和らぎました。
「さあ、外へ出ましょうか」

 
杜氏の気分で櫂入れ作業をするヒデさんと助手


大吟醸用の蒸米(三島雄町)を放冷する中尾さんと木下さん


種付け。手前がオオセト、奥の一角が大吟醸用の三島雄町


酒を搾るための槽(ふね)。もうすぐ出番がやってくる
■一滴たりともおろそかに飲むまいと、新たな決意を胸に

階下の仕込み蔵に戻り、中尾さんの前に全員が並びます。時刻は午前5時。
「実習はこれですべて終わりました。みなさん、本当にお疲れさまでした」
ホッとしたような、寂しいような、不思議な感慨が胸を走ります。部屋に戻ってからも、身体は疲れているのに、なぜかしばらく寝付かれません。ヒデさんもしばらく、メモ帳片手に蔵での出来事や雑感をしたためています。
そして朝。7時半に全員で近くの喫茶店で朝食をとり、SAKE王国のPRなどをしながら残された時を楽しく語り過ごします。部屋に戻るとまもなくコーディネーターの方が来られ、中尾さんも交えて今回の実習を総括。
「今回の4名の皆様は、過去私が受け入れた中で一番優秀でした。十分に一つのチームとして機能するので、よかったらまた誘い合わせて、いつでもお手伝いにお越し下さい」
と過分なお言葉を頂き、一同大感激。コーディネーターの方も後で「中尾さんがあんなほめ方をするのを、僕は初めて聞きました」と証言してくれたので、少なくともひどくご迷惑をおかけしなかったことだけは確かだろうと、胸をなでおろした次第です。

 
午前5時頃。作業が終わり、最後の挨拶を交わす


甑の前で記念撮影

わずか二泊三日の体験実習で、酒造りの苦労が分かったなどとはとても言えません。ただ少なくとも、酒に対する理解と愛情、そして酒造りに携わる人々に対する敬意が一段と深まったのは事実。これからは一滴たりともおろそかに飲むまいぞと決意を新たにした、ヒデさんと助手でありました。

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